This page is written in Japanese.



Go for it

頑張れ、女の子  part 1




(あ、まただ・・・)

通学路の影、校門の横、下足室の角、廊下の隅。
本日も、いろんなところで人影を発見。
それぞれ2人から3人連れで、こちらの様子を気にしているのは明白。
あの学年証の色は下級生だな、とか、何でもない風を装いながら、しっかりチェックしてたりして。
そんな自分自身が嫌になる。


両目とも1.5の視力は、こういうときにはむしろ厄介なのよね。
見たくないものまで、見えてしまうから。
しかも、武道をやっているおかげで、人の気配には結構敏感だと思う。
その気持ちが、どこを向いているのかも。

だけどわたしは意地っ張りだから、ただ笑ってみせるだけ。
新一にも、あの子達にも。



まぁね。いいのよ。
別に今始まったことじゃないんだし。
こんな場面、今の時期じゃなくたって、昔から何度も何度も遭遇してきたし。
どうしてもこの季節、、、バレンタイン前には多くなるけど、もう慣れっこよ。
だって毎年のことだもん。そうでしょ?


自分自身を守るための言い訳を、ほぼ自動的に用意してしまうあたり。
これも一種の適応能力?

・・・なんてね。



はぁっ。



自分との空虚な対話に。
つきたくもないため息が、勝手に零れてた。

その途端、「え?」と振り返られて。
慌てて「今日も冷えるわね」なんて言いながら、素手の両手に息を吐きかけてみたり。
すると新一は「あ、そう」って短く呟いて、もう前に向き直ってる。


事実、新一はすごくもてる。
幼馴染の贔屓目を削除しても、容姿端麗で文武両道。
だからといって、頭の固いヤツってわけでもない。
推理オタクなところを除けば、誰の目から見ても格好いいヤツな訳で。
だけど、新一の容姿だけに惹かれている人達だって、直に接したら、もっと惹かれるに決まってる。
彼の本当の魅力に、、、内側にある、優しさに触れたなら。

周りが新一に惹かれてしまうだけのこと。
だから、新一の所為じゃない。


新一の特別な存在になることができて、すごく嬉しかった。
わたしも自然と、新一に惹かれていたから。
でも、それと同時に、どこか欠けているような気持ちになる。
まるで13日目の月のように、ごく僅かな影を残して。

この隙間を埋められるものは、一体、何だろう?


わたしの行く先のどこかに、答えは落ちているのかな?



そんなことを考えていたからか、少しぼんやりしていたみたい。
トンッと鼻先がぶつかった感覚がして、それが新一の背中だと分かった。


Next →

[Back to Page Top]

Copyright© Karin * since 2003/July/07 --- All Rights Reserved.