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Bitter Sweet

ひとすくいのハート




朝。
いつものように、眠そうな声の新一が玄関のドアを開けると。
翼の無い天使が1人、ニコニコ微笑みながら立っていた。

朝日に縁取られたシルエットが眩しくて、目が眩む。
本当は翼が生えてるんじゃないか、とさえ思ってしまうほどに。


ドアの内側に招き入れた天使を、背中からぎゅっと抱きしめた。
翼が無いことを、確認するかのように。


突飛な新一の行動に返されたのは、声にならない抗議の意思。
真っ赤な顔でじたじたと小さく暴れる天使が、正真正銘、彼の恋人なのだと実感できて。

腕の中の存在を、新一はようやく解放した。






「悪かったよ」とわびる新一に続く、「もういいわよ」とまだ少しご機嫌斜めのソプラノボイス。
その持ち主である蘭から、更に続けて新一へと向けられたのは。
「はい、これ」という、シンプルで素っ気無い言葉。

けれども、温かい響きを持ったそれは、真っ直ぐに新一を射抜く。

見上げてくる控え目な笑顔の下で、きちんと揃えられた両手に乗っているのは。
丁寧にラッピングされた、小さな箱。

箱の中に、何が収められているのか。
自分の誕生日でさえ忘れてしまうような新一でも、流石にわかる。

チョコレート会社の陰謀でも、この際構わない。
むしろ、率先して乗ってやる。


この笑顔の独占権を、行使できるのであれば。


嬉し過ぎて、だらしなく弛みそうになる頬を。
一体、どうやって引き締めたらいいのだろう?



迷宮なしの名探偵、などと世間からは言われていても。
こんな幸せの迷宮なら、ずっと迷ったままでいい。

そんなことを思いつつ、新一は再び蘭を抱きしめた。
有難うと愛してるの気持ちを、最大限に込めて。



− E N D −


新蘭には、夫婦になってからもずっと、初々しさを忘れないでほしいな、と思っています。
・・・鼻血は出さない程度にね(苦笑)
クリスマスもスルーしちゃったから、せめてチョコの日くらいは、と足掻きました。
久々に短くまとまった話を書けた気がする(^^;

ちなみに、今回の背景画像についてですが。
加工しちゃってるので元画像とは掛け離れてるんですけど、これ、ハート型のお香なのよ。かわいいでしょ?


2007/Feb./14

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