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Circle in the Sun

欲しいもの、ひとつ




「あ、そうなんだ? うん、わかった」

そう言って、蘭は明るい調子で新一に言った。
新一の脳裡には、自問自答の嵐が吹き荒れる。

(・・・・・えーっと、この場合は、どう捉えるべきなんだ?)

電話越しの声は、いつもどおりに心地良く新一の鼓膜を刺激した。
何の動揺も感じられない。

10日前の新一の誕生日には――これは事前に決まっていたことだが――どうしても外せない予定が入ってしまい、会うことさえ叶わなかった。

例の組織を壊滅させたあとも、事後処理だのなんだのと、相変わらず新一は多忙を極めていた。
しかし、新一が第一に優先すべきことは、別にある。
それは・・・高校生探偵の本分である、学業。
あまりにも長い休学のため、新一の出席状況には余裕が無い。
だからこそ、学業に影響が出ないように日本独特の連休を使って、FBIとの諸問題をくっきりと片付けてきたのだ。


もう、嘘は吐きたくないから、と。
包み隠さず蘭には事情を報告し、ちゃんと納得してもらった。
笑顔で、いってらっしゃい、と見送ってくれた。

だから、応えるように、新一は言った。
蘭の誕生日には、2人分のお祝いをしような、と。

そんな提案に、蘭は花のような笑顔を新一に向けた。
ものすごく楽しみにしていてくれるのが、伝わってきた。

それなのに。
急遽キャンセルする羽目になった。



今まで散々重ねてきた嘘の代償が、こんなところで跳ね返ってきたとでもいうのか。

オレは、それでもいい。
まさしく文字通りに、自業自得。

でも、そんなオレのエゴが、また。
蘭を傷つける。

ああ、どうしてこうなるんだ、と内心で頭を抱えても。
現実は何も変わらない。



いろいろあって、やっとお互いの想いが通じ合って。
どんな些細なことも一緒に感じていきたいと、そう思って、願って。
でも上手くいかなくて。

もう、呆れて何も言えない? 言う気もない?



それでも、何か言いたくて、新一は重い口を開く。

「悪いな、いつもオレのワガママで」
「どうして? 今日がわたしの誕生日だから?」
「あ・・・うん。だって、オレ、約束したのに。おまえ、全然・・・・」

気にしてない?と続けようとした新一の言葉を遮って、蘭は言う。
気にはするよ、でもね、わたしもワガママだから、と。
そして、もうひと言、蘭は続けた。

怪訝な顔の新一を、一瞬で熟れたトマトのように真っ赤にさせることに成功して。







「誕生日だから、じゃないの。いつだって新一の中にわたしがいれば、それでいいの」


− E N D −


これ、EMさん宛の文字スケブから引用。
ちょっとアレンジしてみました(^^;
今年もM月さん宅の設定に便乗しまして(いつも勝手にスミマセンっ)。
蘭ちゃん、お誕生日おめでとうv
スルーしてしまった新一BDもチラッと絡めて、一緒にお祝いしてみた。

ハイ、女神・蘭ちゃんです。


2007/May/14

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