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20040504ー手足腰企画@LOVE IS TRUTH さま 

Girls Talk

〜 恋は盲目、愛は??? 〜

「ごめんね、和葉ちゃん。今日は折角約束してたのに」
「ええよ、そんなん。それに困ったときはお互い様やろ?気にせんといて」

工藤邸のリビング中央に設置されている応接セット。
コの字型に並んだソファの3人掛けの部分で自分は足を投げ出して横になっているというのに、グリーンのエプロンを身に付け、ドアの隙間から顔を覗かせた和葉に日溜まりのような笑顔を向けられてしまい、蘭は合わせた両手の指先が額にくっつく程、精一杯の気持ちを込めて和葉に詫びた。







お互い大学生になって初めての長期連休であるゴールデンウィーク。
一緒にどこかへ出掛けようね、と約束したのは、大学が始まって間もない4月の初め。


当然のように新一と同じ大学・・・つまり日本の大学の最高峰に通う平次と、顔にでかでかと書いてある本当の理由は言わず、「ほんま偶然やけど、行きたい大学が東京にあんねん」と上京して来た和葉。
平次も和葉も、最初はそれぞれが一人暮らしをするつもりで新一や蘭に住居のアドバイスを受けたりしていたのだ。
ところがある日、ポツリと蘭がこぼした「4人で一緒に暮らしたら、毎日楽しいだろうね?」の一言が事態を一変させた。

どうやら、自分にとって都合が良いことにはしっかりと食い付いてくる大阪コンビのほうが、1枚上手だったらしい。
断固阻止しようとした新一が口を開くよりも、二人の勢いは脅威的に素早く且つ強かった。
結果、新一の必死の抵抗も空しく、極めて民主主義的に工藤家での共同生活は3対1で可決されたのだった。





そうしてスタートした共同生活が半月程経過し、少しずつ新しい環境にも慣れ始めた頃。
手帳を見ながらお互いの予定と行きたい所、やりたいことを確認してみた。
GW前半に一旦大阪の実家へ帰省し、今後の生活に必要な荷物の手配や自室の片付けをして来たいという和葉に合わせ、歩いて数分の距離ではあるが、蘭もこれからの時期に必要となる夏物の衣類を取りに帰ったり、この広い工藤邸の中でも日頃あまり使わない部屋を丸ごと掃除したりする期間に充てることにした。

そうして突き詰めていくと、カレンダー通りの休日しかない二人には、5月3日しか時間が取れない、という結果が弾き出された。

「・・・そうやなぁ。1日しかないんやったら、残念やけど、今回はどこかでショッピングするくらいで終わるやろね」

パタンと手帳を閉じて、和葉が軽く息を吐く。

「まぁ、今までみたいに離れて住んでるわけやないんやし、別にGWに限定せんでもええんやから。また普通の日とかでも遊びに行こな?」
「わかった。でも、もし和葉ちゃんさえ良ければ、わたしは残りの日も空いてるけど?」

という蘭の言葉に、和葉はリビングのテーブルについていた頬杖を、ガクッと音をたてて崩した。
一瞬、唖然とした和葉に奇麗さっぱり否定されてしまった自らの提案を、「どうして?忙しいの?」と蘭が問えば、「あたし、まだ馬には蹴られたくないねん」と即答が返ってくる。


最初の出会いのときにはちょっとしたすれ違いはあったものの、今ではすっかり打ち解けてしまった二人。
知り合ってからまだ2年程度しかたっていないというのに、何年も同じクラスになったことがあるクラスメート達より、お互いの関係はもっとずっと親しい間柄に発展している。
それは、二人を取り巻く環境が余りにも似ていた所為もあるだろう。
しかし、それだけの理由でこんなにも近い存在になれるとは限らない。

幾多の危険を乗り越え、ときに励まし合い、笑顔を交換する。
そんな風に支え合ってきた存在だから、こんなに仲良くなれたのかもしれない。


ニヤニヤ笑いをちらつかせる和葉の意図したものを見つけた蘭は、照れたように小さく笑った。









パンパンっと手を叩きながら、和葉がリビングに戻って来た。エプロンを外し、ソファの背に引っ掛ける。

「お待たせ、蘭ちゃん。とりあえず、普通の拭き掃除と掃き掃除は終わったで」
「まだこの家の事慣れてないのに、大変だったでしょう?本当にごめんね、和葉ちゃん」
「ここに住ませてもらうことになったとき、言うたやろ?あたしら二人の間に、遠慮は一切なしやでって」
「だけど、本来ならわたしがやっておくことだったのに・・・」
「心配せぇへんでも、蘭ちゃんが本調子に戻ってから一緒にやろうと思って、本格的な掃除が必要なところは残してあるから。な?」

大阪の服部邸の広さも相当な物だが、この工藤邸も園子の所には適わないまでも、かなり広範囲の敷地面積を保有する。
それを、ここに住み始めてまだ1か月にも満たない和葉が掃除するのは、確かに骨の折れる大仕事のはずだ。
それでも、カラカラと笑って、湿りかけた蘭の心を軽くしてくれる。
和葉の、それとは気付かせないようなさり気ない思いやりが、蘭には心地良く染み渡った。


ピンポーン。

午後のゆったりとした空気を遮るように、突然インターコムの呼び出し音がリビングに響く。
蘭に間髪を入れる隙を与えずに「はーいっ」と和葉の威勢のいい返事と、パタパタと玄関へ向かう足音が続いた。

一応液晶パネルで来訪者を確認してから、ロックを解除する。
ドアを開けると、キラキラと輝く太陽を招き込んだように、その来訪者は一挙に室内の明度まで上げてしまった。

「やっほ―っ、蘭。お見舞いに来たよー」

手にしたケーキボックスをちょっと掲げた園子が、和葉に連れ立って蘭の顔を覗き込む。

「お見舞いだなんて、大袈裟なんだから。そんな重病人じゃないんだし」
「だって蘭が怪我するって珍しいでしょ?それに『お見舞い』っていうのはただの口実で、本当はお茶しに来ただけなんだ♪」

高校卒業と同時に、鈴木財閥を背負って立つ決意を固めた園子。
大学での講義に加え、帰宅後には家庭教師による特別授業を受けている。
きっとこの連休も、忙しく勉強しているに違いないはずなのに、その合間を縫って、わざわざ蘭の様子を見に来てくれたのだろう。

二言三言やり取りをした後、わざと額に手を当てた園子がきょろきょろと周囲を見渡して確認する。

「ところで、大馬鹿推理の介1号2号は?」
「あはははっ。園子ちゃん、上手いこと言うなぁ。あの二人やったら、今日も仲良く現場直行やで。ほんま、こっちが妬けるくらいにいっつも一緒におるんやから」
「ほんと、そうだよね。新一も服部君も、大学行ってるか現場に行ってるか、このどちらかだもん」

くすくす笑う蘭の様子に、園子が呆れて言い足す。

「でも、蘭が怪我してるっていうのにさ、新一君、ちょっと冷たいんじゃない?」
「そやね。放ったらかしやなんて。なぁ?」

和葉も園子に同意して、うんうん、と頷く。
いつの間にかいいコンビに仕上がっている目の前の二人に、蘭は、捻挫くらい別にたいしたことじゃないんだから、とこの場にいない家主を擁護する。

「そうや!もう少し二人でゆっくりしといてくれへん?あたしお茶の用意して来るわ」

急に何かにひらめいたように立ち上がり、ケーキボックスを抱えた和葉がいそいそとキッチンへ消えて行った。
その背中を見送ると、申し訳ないとは思ったが、久し振りに過ごす親友との時間を遠慮なく満喫させてもらうことにした。
蘭と園子とは同じ大学だが学部は違うので、今までのように四六時中一緒というわけにはいかなくなってしまったから。

ソファのクッションの上に乗せられた蘭の右足首にそっと園子の手が触れる。

「まだ熱を持ってるみたいだね。これ、そうとうひどく捻ったんでしょ?」
「あ、うん、まぁね。でも新一がちゃんと手当てしてくれたおかげで、これでも随分良くなったんだから」
「ところで怪我の原因は何だったの?和葉ちゃんからは蘭が捻挫したことしか聞かなかったから、知らないんだけど?」
「実はね・・・」


***


今から遡る事、2日前。
自宅から運び込んだ夏物の衣類を片付けていた蘭の目の前に、すらりと長い新一の人差し指と中指の間に挟まった細長い紙切れが2枚、飛び込んで来た。
手にとって見てみると、このゴールデンウィークに開業する新しい室内アイススケートリンクの招待券だった。
本格オープンは5月5日の子供の日だが、マスコミ関係者やスポンサー、それに近隣の住民達などの招待客限定で開かれるプレミアイベントとして一時オープンするとのことで、事件解決のお礼に貰ったんだ、と言って笑う新一のもう片方の手には、しっかりと車の鍵が握られていた。

本当のところ、蘭はその前日の空手部の練習で少し足首を痛めていたのだが、軽い運動は出来る程度の状態だったし、それに久し振りの新一からの誘いが嬉しくて、急いで部屋を片付けてリンクへ向かった。


最初に二人でスケートに行ったときは、蘭にとっては全く初めての体験で、氷上に立っていることも難しい状態でいた。
一方の新一は、簡易なジャンプまで披露するくらいの腕前を、惜しげもなくひけらかす。
そこが嫌味にならないのが、持って産まれた素質というものだろうか。
それでも蘭が一通りは滑れるようにと、散々冷やかしながらではあったが、新一の指導は丁寧で且つわかりやすいものだった。
もともと蘭は運動神経が良く飲み込みも早いので、初めのうちは苦戦したものの、すぐに何の問題もなく滑れるようになれた。
でも、転びそうになる度に支えてくれる、細身なわりに力強い新一の腕に、自然と早くなる鼓動を押さえようと当時の蘭は苦心したものだ。


招待客のみで比較的空いているからそう感じられるのかもしれないが、新しいリンクはトロピカルランドのものよりはひと回り大きいように見えた。
先にリンクに降り立った新一が肩の高さに右手を差し出し、蘭を氷上へ招き入れる。
前回のスケートのときは蘭のほうが小さな手を包み込んでいたから、そのギャップが急にフラッシュバックしてきて、蘭は思わず懐かし気に瞳を細めた。
それに気付いたのか、ちょっとバツが悪そうにした新一がいきなりグイッと蘭の手を引っ張り、不意を突かれた蘭はそのまま新一の腕の中に収まるかたちになった。

「もうっ、新一の意地悪!」

驚いたのと恥ずかしいのとで、突き飛ばすようにして新一のもとから離れようとした蘭の足元に、コントロール不能に陥った小学校低学年くらいの男の子が突っ込んできた。

いつもの蘭なら難なく交わす、或いは助けてあげることが出来たのかもしれない。
しかし、新一の手から逃れようとして無理な体勢をとっていたところに、更に動きの予測がつかない状態の子供を救い起こそうとしたのが間違いだった。
想像以上に加速度がついていた男の子を抱きとめようと手を伸ばした途端、痛めていた足首に多大な負荷が掛かり、結局、蘭もその少年と一緒に転んでしまったのだ。
間一髪で新一がカバーしてくれたから、辛うじて頭を氷面で強打しなくて済んだのだけど。

蘭は、深々と丁寧に頭を下げて詫びる少年に、心配してくれて有難う、と既に動かなくなった足首の痛みを押し隠し、笑顔を見せた。
それでもずっと氷上に座ったままでいる蘭を心配そうにじぃっと見つめてくる瞳に、再び短いデジャビュが蘭の脳裏に現れた。
ずっと傍にいて、精一杯に手を広げて蘭を守ってくれた、小さなナイト。
あのとき感じた微量の違和感はやっぱり正しかったんだな、などと振り返ってしまう。

踏ん張ってどうにか立ち上がり再び笑顔を向けてやると、ようやく安心したのか、少年は両親と思われる夫婦の下へ手を振って戻って行った。
向けられた視線にふと気付いて顔を上げると、腕を組んで複雑な表情を作った新一が蘭を見つめていた。


***


「おまたせーっ」

ひととおり怪我の原因を説明し終わったところで、和葉がキッチンから戻ってきた。
トレーに乗せているのは、園子が持ってきたケーキ用の取り皿と、小振りのカフェオレボールが3つ。
園子がケーキを取り分け、和葉が飲み物を配る。

セッティングが終わったところで、女の子同士のささやかなお茶会が開始された。


両手にちょうど収まる大きさのボールからは、ミルクの香りが甘く漂う。
しかし、表面に薄く張ったミルクフォームに隠された色味は、見慣れたものではなかった。

「・・・これって、カフェオレじゃないよね?でもティオーレでもなさそうだけど?」
「どっちもちゃうよ。うーん、そうやなぁ、人呼んで『和葉スペシャル』ってところやろか」
「何それ?蘭、あんた知ってるの?」
「ううん、初めて聞いた」
「ま、ええから。とりあえず飲んでみてみ?」

まず自分から口をつけて、満足そうに味わっている和葉の様子を見てから、蘭と園子もそろってボールに口をつけた。

「あ、これ、抹茶オーレね?」
「当たり!ちょっと豆乳も混ぜてあんねん」
「すごくおいしいっ!」
「そやろ?大阪に戻ってたときに、平次んとこのおばちゃんにお土産持って行ってん。で、そのときに「ええお抹茶が手に入ったから」って言うてな、あたしにもお裾分けしてくれはったんよ」
「じゃあ、和葉ちゃんって茶道やるの?もしかして園子と同じ流派なのかな?」
「わたしは裏千家だけど、和葉ちゃんも?」
「あたしも裏。おばちゃんには他にも華道やら着付けやらまとめて教えてもろてるから、一応ひととおりのことは出来るんよ。それに、お茶だけやったら平次も出来るはずやけど?」

ケーキを頬張りつつ、女の子たちの会話は弾む。
こうしてゆっくりと会話するのも久しぶりのこと。お互いの近況報告や好きな音楽、テレビの話まで、話題はどこまでも尽きることはない。
そして、お互いの恋人達の事も。



「そういえば、スケート場で怪我したあとの新一君の反応はどうだった?」
「それ、あたしも聞きたい!」

好奇心満面の顔が二つ、蘭の目の前に並んでいる。
別に面白い話はないわよ?と念を押してから、ポツリポツリと話し出す、蘭。


「・・・最初はね、捻挫しちゃったことをごまかせると思ったのよ?実際、あの男の子には気付かれなかったし」

手にしたボールを弄びつつ、頬をわずかに染めた蘭は言葉を続ける。

「でも、新一ってそういうことにはやたらと鋭くって、わたしが立ち上がった時点でバレてたみたいなのよね」
「なるほどね。大体、読めたわ」
「ちょっと待って、なんでごまかさなアカンの?」

もっともらしい質問を和葉が投げ掛ける。
園子ほど新一との面識がない和葉には、その後に取られるであろう新一の行動が予測できなかったのだ。

「だってあの後、わたしが「恥ずかしいからやめてよ!」って言うのに、「この方が早く救護室に行けるだろ?」とか言って、わたしの事なんてお構いなしで、えっと、その・・・わたしのことを抱えたままスケート場の中央を突っ切って滑っていくんだもん」

そのシーンを思い出したのか、蘭は急に赤みを増した顔を俯けた。
園子は、やっぱりね、という顔で肩肘を尽いている。
一拍遅れて、和葉がその場面を思い描いたときには、園子と共に大爆笑の渦を作り出していた。

「工藤君って、期待を裏切らへん男やね」
「ちょっと二人とも、笑い事じゃないわよ!わたし、本当に顔から火が出るくらい恥ずかしかったんだから!」

むきになって言い返す蘭に対し、先に笑いを引っ込めた和葉は目尻に笑い泣きの涙を溜めたままだ。

「そういうのをね、『幸せの束縛』って言うのよ。ま、平たく言えば、こいつは俺のモンだ、誰にも触らせねぇ、っていうことになるかしら」
「わかるわ、それ。さっすが園子ちゃん、付き合い長いだけあるなぁ」
「あのねぇ・・・」

PiPiPiPi PiPiPiPi PiPiPiPi

好き勝手に言われ放題だった蘭の携帯が、突如短く音を立てた。
慌てて液晶画面を確認した蘭の表情を見て、和葉にも園子にもその送り主がわかる。

「噂をしたら影、やね」
「そのメール、新一君からでしょ?」
「えぇっ、どうしてわかるのよ?!」
「そんだけ嬉しそうな顔してたら、誰でもわかるに決まってるやん」
「そ、そうかな・・・」

正式に恋人関係になってから随分経過しているのに、新一の話題になると蘭はいつまでたっても照れくさそうにして話す。
いじらしい少女のような様子に、和葉と園子はついからかいたくなってしまうのだ。

「で、何だって?」
「本文のみで、「湿布交換する時間だから、忘れずにやっとけよ」だって。メールの件名くらい入れてくれてもいいのに、相変わらず素っ気ないんだから」

蘭本人は一応怒っているつもりらしい。それでも、傍観者2名から見れば、どうやったって嬉しそうにしか見えない。

「心配で仕方ないんやったら、事件なんか断ったらええのに。工藤君も素直やないねぇ」
「ほんと、一時でも離れたくないくせに、ね」
「今始まったことじゃないけど、やっぱり新一にとってはいつだって事件が一番なのよ」

茶化しているように見せて瞳の奥に影を落としている蘭に、痛いほどその気持ちがわかる和葉が答える。

「ほら、せっかく工藤君が連絡してくれたんやから、湿布交換しよか。平次もよう怪我しとったから、あたしこういうこと慣れてるし、手伝うで?」
「申し訳ないけどお願いしてもいいかな、和葉ちゃん?」
「じゃ、わたしはテーブルの上を片付けるね」


湿布を張り替え、和葉がテキパキとテーピングを付け替えたところで、蘭が急に大声を上げた。

「今日買い物に行くときに新一の誕生日プレゼントを買おうと思ってたから、まだ何も用意してないの。どうしよう・・・」
「ええっ、そうやったん?もう夕方やから、今から買い物に出掛けてもお店も閉まってくる時間やしなぁ。どないする?」

園子が訪れたときにはまだ高かった太陽も、オレンジ色に周囲を染め始めている。5月ともなれば随分と日が長くなり、日没時刻は午後7時に迫っていた。

「何騒いでるの?プレゼントくらいあげなくたって、新一君なら怒ったりしないわよ。きっと」
「でも、何かしてあげたいんだもん」
「そやけど工藤君の誕生日って、明日やろ?今からやったら通販じゃ間に合えへんし」
「あんたたち何時だって『相互ラブラブ』なんだから、蘭は堂々と旦那の帰りを待ってたらいいの!それに新一君には蘭がいるだけで十分なんだしね?」
「そうそう。明日には間に合えへんけど、怪我が治ってから買い物に行ったらええやん。あたし付き合うし、な?」
「じゃあ、早く治るように、わたしがおまじないしてあげる」

ケーキボックスに付いていた赤いリボンを手にして、園子がにっこりと微笑んだ。
テーピングの上からリボンを巻き、綺麗に蝶々結びを作る。

「さ、これでいいわ。あ、わたしそろそろ帰らなきゃならないんだ」
「うん、ありがとう、園子。玄関まで行けなくて、ごめん」
「ええよ蘭ちゃん。あたしが送ってくるから」
「じゃあ蘭、また大学でね」



門扉のところまで園子を見送りに来た和葉に、園子が耳打ちする。

「ところで和葉ちゃん、折り入って相談があるんだけど」
「あのおまじないのことやろ?あれって、もしかして・・・?」
「多分気付いてないのは、本人だけよ。新一君にはこれからメール入れとくし。で、協力可能?」
「うまい事言うて、平次を家から連れ出したらええんやろ?大丈夫、任せといて」
「もし行く所がなかったら、うちに来てくれたら良いからね」
「OK。あとで電話するわ」




園子が送ったメールを見て速攻で新一が帰宅したのは、想像に容易いことであった。



『新一君へ
リビングのソファの上に、わたしからの誕生日プレゼントを用意しておきました。
生ものに尽き、お早めにお召し上がりください♪園子より』

− END −



とあるチャットの会話から生まれた、LOVE IS TRUTHのmaa様主催の『手足腰企画』。
あれよあれよ、という間に豪華な企画参加者が集まって来られて、私一人だけ浮いてます。
締切ギリギリですが、どうにか書き上げました。でも、内容的にこの企画の趣旨に合ってますか?
大丈夫かな、この話?
予告(?)は覆して、ちょっとだけ新一の出番を作りました。それで勘弁してもらえないかしら?(あははっ)

5/31にて、『手足腰企画』無事終了。主催のmaaさん&ご参加の皆様、お疲れ様でした。
そして、たくさんの素敵作品を拝見出来て幸せでした。有難うございました☆

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