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Fic



silver moon

月が微笑むから 〜 side 蘭 〜





例えば 家事が一段落して 自分の部屋でくつろいでいるとき
宿題の合間に 何となく夜空を見上げているとき
お父さんもコナン君もいなくて ひとり留守番中のとき

特別な音色と表示が わたしの鼓動を早める



まず 深呼吸をひとつ
それでも心の準備が完了しないまま 震える指先で通話ボタンを押す

「よぉ、久しぶり!元気だったか?」
「そっちこそ、どうなのよ?ちゃんとご飯食べてるの?」


新一からの電話は 時折気まぐれのように掛かってくる
あまりにも唐突すぎて わたしはひとり慌てふためいてしまう
きっと知らないんだろうなぁ こんなこと

それなのに
新一からの第一声は いつもこんな風に能天気に始まるから
常日頃 頭の隅にあれこれと思い留めていた言葉が 一気に吹き飛んで
結局 口喧しい姑みたいな台詞ばかりが しゃしゃり出てくる

新一にしてみれば もう聞き飽きているのだろうか
噛み付くようなわたしの言葉も 軽くあしらわれてしまう

でも 聞き慣れたはずの 携帯越しの新一の声は
今日は何だか どこかが違うように感じられて

いつもより ほんの少し固い響きが含まれているような
ただ何となく そんな気がして
わたしの中の不安を煽る

だからわたしも いつもよりほんの少しだけ うわずったトーン

音痴のくせに音感だけは良い新一のことだから 気付かれちゃったかも




本当は わかってるんでしょう?
あなたは何でもお見通しの名探偵 気付かないはずがないものね
わたしの気持ちなんて 見透かしてるんでしょう?


それでも こうやってわたしに電話してきてくれるのは
ほんの少しくらい 夢見ても良いってこと?

そう思ってしまっても いい?


だけどわたしは この泥濘から這い出せないまま
結局 何の変哲もない会話を繰り広げてしまう

「じゃ、また電話する。」
「うん、またね。」

そして いつものように 確約のない未来へ繋がる言葉を残して
また ひとりに戻る




新一に会えなくなってから どれだけの日々が過ぎ去ったんだろう?
もう 時間の感覚さえ おかしくなりそうだよ

最初は 一方的に掛かってくる電話を待つことしか出来なくて
そのうちにメールでのやり取りに加えて 携帯番号も教えてくれた

留守電のメッセージの声が聞けるだけでも すごく嬉しくて
確実に本人は出ないだろう と思うわれる時間帯を狙っては
何度も何度も立て続けに リダイヤルボタンを押した

液晶画面に表示されるメールを 飽きることなく眺めていたり
着信履歴に残った 携帯番号を何度も確認してみたり

少しでも 新一の存在を確かめたくて



だけど 肝心のあなた自身は 一向に現れてくれないんだね・・・


きっとこれは 神様が下された罰
自分の気持ちに正直になれなかった 臆病者のわたしに課せられた罰




『幼馴染み』という 新一の側にいられる唯一の理由を奪われたくなくて
どうしても 最後の一歩を踏み出せないでいた


だから 毎年欠かさずに渡していた バレンタインのチョコレートも
あくまでも『義理だからね』と 真逆のひと言を添えてしまっていた 罪深い心

本当は 誰にも負けないくらいの気持ちを込めて
新一のためだけに用意した 特別なものだったのに



でも もう止めるから
自分に嘘をつくのも 新一に嘘をつくのも

待っているだけの わたし自身にも
きちんと サヨナラするから



だから ほんの少しだけ 力を貸してください


新一に想いを伝えられる 勇気と力を




振り仰いだ夜空に 細く浮かび上がる三日月が

『大丈夫だよ。ほら、ちゃんと伝えなきゃだめだよ?』

と背中を押すように
まるで微笑んでるみたいに見えて


わたしは もう一度通話ボタンを押した

「ねぇ、新一。今、お月様、見える?」
「ああ。なんか笑ってるみてぇな月だよな?」

ほら やっぱり
わたしのことなんて お見通し

でも 今夜のわたしは 違うんだから!




「あ、あのねっ、新一。わたし、、、わたし、ずっと、、、、」



− End −




えー、現在ホワイトディ終了間近なのですが・・・やはりアップしちゃいました。
実はIndexページのロゴから飛べるのは、フェイク。こっちが本番用(?)として用意していたものなのでした。
(だって、絶対に間に合わないから、フェイクを穴埋め代わりに先にアップしておいたのよ)

本当は、これ↑の新一バージョンを作って、ホワイトディと絡めてセットにしようと思っていたのです。
でもでも、途中とか後半とか(要するに全部)まるで考えつかなくって。(あははははー/脱兎)
一応、頑張ってみまーす。


【追記】
何だか、焦点のぼやけたお話になってしまってますね。
Fictionのページに出すかどうか迷ったのですが、折角書いたのでアップしちゃいます。
ああ、この辺↑がやっぱり貧乏性、、、(涙)


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