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High School Heroes


〜 2009年新蘭オンリー提供小話より 〜


巷で噂のティーンエイジャーを、いち早くご紹介。
さて、本日のターゲットは・・・

ピリリとした空気の中、彼はいた。
妙な自信の上に胡座を掻く、彼の倍以上年上に見える男と真正面に対峙しながら、引け目を一切感じさせない強烈な存在感で、彼は佇んでいた。
強面揃いの刑事達を従えるように、一番年若く見える彼が一歩前に出る。
そして、怯むこともなく淡々と、推理という名の真実を突きつけ、男の足元を一挙に崩してゆく。

こうして彼は、迷宮入りかと思われた事件を、鮮やかに解いてみせた。
犯人が連行され、現場に平静が戻ると、彼はようやく凛とした表情をゆるめた。
刑事達と談笑する姿は、明るい色のスーツに身を包んだ、正義感に溢れる駆け出しの刑事のように見える。
しかし、それは制服なのだという。


そう。今回ご紹介するのは、自薦でも他薦でもなく、我々記者の間で評判になっている、高校生探偵・工藤新一君。
まだ高校1年生の彼の、一体何処にこれ程までの度胸と経験が備わっているのだろうか?

フツフツと沸いた疑問の答えは、苦労することなく手に入った。
父親は世界的推理小説家・工藤優作、母親はあらゆる賞を総なめにした女優・工藤有希子という、彼のそのバックボーンに成る程と膝を叩く思いだった。

正直なところ、初めて彼の噂を聞いたときは、一介の高校生を頼りにする日本警察の将来が心配になった。
しかし、今回の取材を通して、そんな心配は吹き飛んでしまった。
それどころか、逆に「日本警察の救世主」の出現に安堵感さえ覚えた。



事件現場は徐々に平静を取り戻し、集まっていた野次馬達も散らばってゆく。
数人の関係者に挨拶をしながら、黄色い規制線の外へ出てきた工藤君には、先程のような張りつめた雰囲気はなく、年相応の若者に見えた。
工藤君は、取材のカメラの前でも、緊張することなくごく自然な表情を見せてくれる。
度胸の良さは母親譲り、抜群の推理力は父親譲りといったところか。
気に障るかと思いつつ、工藤君本人にそう聞いてみたところ、彼はあっさりと肯定した。
探偵としての素地は、両親の影響なくしてはあり得ない、と言う。
続いて、将来の夢は?と尋ねてみると、事件現場で見た彼とは真逆の、実に少年らしい笑顔でこう言った。

「平成のホームズになること」

夢を語る彼の笑顔は、最高に晴れやかだった。


【END】



2009年の新蘭オンリー「赤い糸の絆」にて、当日企画のオマケに使っていただいたものを再掲。
「名探偵にお任せを!」なポーズの新一の写真に付く記事のような感じで・・・というオーダーを受けて書いてみました。如何でしょう?
自分自身では、普段と少し違った風味にしてみたつもりです。

主催&スタッフの皆様、お疲れ様でした。
そして、お声掛けくださり、有難うございました!

2012/Jan./16


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