This page is written in Japanese.



Silent motion

広げた手のひらの中に残った、最後のもの

― Happy Biethday dear Shinichi ―




カツカツカツ。
キイィ、パタン。
カタッ、パサリ、ワシャワシャ。
コトン。

普段なら気にも留めないほどの、わずかな音。
何も特別なことをしているわけでもないのに、生じてしまう音。
歩く、ドアを開ける、荷物を置く、鞄の中身を取り出す・・・などなど。
意識的に息を殺してでもいない限り、避けられないものばかり。
それでも今の蘭は、自己の最大限の努力でもって、できる限り静かに振る舞うように、と心掛けていた。
2年間分の想いを、残さず全部、吐き出すためにも。


* * * * *


「ちょっと作ってみたい料理があるんだけど、うちの台所じゃ無理みたいなの。
だから、新一の家を使わせてもらっても良い?」

蘭から新一へ、そう言って切り出したのは、先週のこと。
標準的一般家庭レベルの毛利家の台所とは、比べることさえ無意味だと思う。
工藤邸のシステムキッチンは、ちょっとしたレストランの厨房並みの設備が整っていた。
新一が1人で暮らすようになってからは、名実ともに無用の長物と化している。
だから、蘭がキッチンを使ってくれるなら、新一としても好都合だった。

新一は、例の厄介な事件を解決し、改めて蘭にこの家の合鍵を渡した。
「いつでも好きなときに使って良いから」と言い添えて。
蘭は勿論「有難う」と言って受け取っていた。
けれども蘭は、毎回律儀にお伺いを立てる。

すべては、今日という特別な日―――新一が生れてきた日、のために。


* * * * *


5月の連休、ど真ん中だというのに、家主は相変わらず事件に夢中で。
昨日の夜の時点で、既に新一からは「夜には戻るから、それまで好きにしてくれていいよ」と言われている。
蘭は手にした合鍵を使い、そうっと重厚な玄関ドアを押し開けた。

まだ昼下がりの時間帯だが、明かりの灯っていない工藤邸は、不気味なくらいに静まり返っていた。
もしここが通い慣れた新一の家でなければ、平静を保っていられないかも、と人一倍怖がりの蘭は思う。
ギギギ、と蝶番の音が吹き抜けの玄関ホールに反響して、実際よりも大きく聞こえたような気がする。
お邪魔します、と無人の空間に小さく宣言して、蘭は後ろ手にドアを閉めた。




すぐさまキッチンに直行しても良かったはずなのに。
身についた習慣というものは侮れないもので。
蘭は、工藤邸を訪れる度に最初に通される、リビングへと足を踏み入れた。

いつもどおりにドアを開けると―――明らかに感じる、人の気配。
一瞬、何か冷たいものを背中に感じたが、その緊張の糸はすぐに解れた。
出掛ける予定がキャンセルになったのか、それとも既に帰宅したのか。
自らの腕を枕にして、ソファの傍らに常備してあるブランケットに包まり、横になっているのは・・・新一。
俯き加減のために表情を読むことはできないが、遠めに見る限り、具合が悪いというわけでもなさそうだ。

蘭の訪問に気付いていないらしい様子に、安堵の溜め息を小さくひとつ零して。
そうっとドアを閉め、蘭はキッチンに向かった。


* * * * *


去年はお祝いしてあげられなかったから。
どうしても、今年の新一の誕生日は一緒に・・・
ちゃんと向かい合って、目を見て「おめでとう」と言ってあげたい。
だから今日は、できる範囲で精一杯のことをしよう。

そう思って、蘭なりにこの日に思いを巡らせてきた。
けれども新一は、自分自身の誕生日というものにあまり関心がないらしく。
蘭が指摘するまですっかり忘れていた、なんてことが過去に何度もあった。
故に、蘭が突然「作ってみたい料理」などと言っても、それが「バースディケーキ」だとは、きっと新一は思っていない。

名探偵と呼ばれるに相応しい優秀な記憶中枢は、一体どういう区分けになっているんだろう?

などと蘭が思うことも、一度や二度ではない。
そのくせ、蘭の誕生日はしっかり覚えていたりするのだから、やはり新一は、自分自身に興味がない・・・のかもしれない。

買い込んで来た材料を机に並べ、蘭はエプロンをまとう。
今日は新一の誕生日。
笑顔でお祝いしなくちゃ。
少しでもいいから、新一に喜んでもらえたら、と思う。


* * * * *


(しーっ!静かに、静かに!)

心の中でそう言い聞かせながら、蘭はメレンゲを泡立てる手を動かし続ける。
電動の泡だて器を使えば楽勝なのはわかっているが、意外に音が大きく、遠慮したのだ。
広く堅牢な造りの工藤邸では、そこまで気を遣う必要はないのかもしれない。
しかし、日頃から空手で鍛えている蘭にとっては、これくらいの手作業なら大した苦でもない。
それに、自らの手をできるだけ多く掛けて作るほうが、気持ちも沢山込められるような気がして、どんどん力が湧いてくる。

夕食の仕込みは手早く済ませたから、あとはとにかく、ケーキ作りに専念できる。
スポンジを焼いている間は、デコレーションの準備。
バニラビーンズを混ぜ込んだカスタードクリームは、焦がさないように慎重に、艶が出るまで丁寧に混ぜて。
新一の好みに合わせて、甘さは控えめ。
飾り用にカットしたフルーツの爽やかな香りに上乗せして、甘いクリームの香りがふわりとキッチンに充満する。
ちろりと指ですくっては味見して、を2回ほど繰り返して、満足のいく味に仕上がった。
あとは、焼き上がったスポンジが冷めるまで待ち、仕上げをするだけ。

窓から見える景色からは気が付かなかったが、いつの間にか、夕方と言ってよい時刻になっていた。
随分と日が長くなってきたんだなぁ、などと季節の移ろいを目の当たりにしながら、ふと思い起こしたことが、ひとつ。

蘭がキッチンにこもってから、既に数時間。
では、リビングにいた新一は・・・・・?


* * * * *


まさか、と思ったことが、現実となっていた。
さっき見たときと寸分違わぬ姿勢で、新一はリビングのソファに横たわっている。
蘭がそっと近寄っても、新一が動き出す気配は、微塵も感じられない。

薄暗くなり始めた、室内。
わずかな寝息も聞こえないほどの、熟睡。
人の気配には敏感なはずの彼にしては、珍しい。
これではまるで・・・。


勢いよく巻き戻る、記憶(メモリー)。
停止したのは、緋色のページ。


新一からの連絡が途絶え、一体どこで何をしているのか、その消息がまったくわからなかった頃。
新一の無事を信じたい気持ちと、怖がりの蘭だからこそ、浮かんでは消える負のイメージ――最悪の結果も交えて――が、複雑に絡み合って、蘭の心を蝕んでいた。
そしてそれらは、どこか遠くに感じていた「死」というものの存在を、蘭の手元へと手繰り寄せてしまった。

戻ってきた新一は詳細を明らかにせず、結果的には蘭の杞憂に終わることとなった。
しかし、風の噂で新一は、ソレに近い状態にあったらしい、と聞いた。

それでも約束どおり、新一は無事に戻ってきてくれた。
今、ちゃんと蘭の目の前にいる。
緋色の悪夢を見る必要など、もうどこにもないはずなのに。
確かめずにはいられなくなる。
生きている、その証を。


蘭は新一の傍らに膝を抱えてしゃがみこみ、しばらく新一を見つめてみたのだが。
やはり気付かないようだ。
思案するまでもなく、一番確実で手っ取り早いのは、直接手を掛けて揺り起してしまう方法。
でも、折角の睡眠の邪魔をしたくはない。
だから蘭は、そっとそっと、鼻と口を覆うように、右の手のひらを新一へと差し出した。


すう、すう。


微かに、けれども確実に伝わってくる、一定のリズム。
手のひらで受けた穏やかな呼気が、新一の体温まで伝えてくれるようで、その温かさは蘭の凍りかけた心を一挙に溶かした。

(・・良かった)

蘭の心の呟きに反応するように、新一がわずかに身じろぐ。
たとえどんなに深い眠りについているとしても、至近距離で顔面に手をかざされては・・・
無意識的に不快感を感じているのかもしれない。

そう思った蘭が、手を引こうとしたとき。
新一は赤い舌先をちろりと覗かせ、口角辺りを舐め上げた。
そして―――

(・・・・・・・・・・・・・え、今、何?)



べろん。



何を思ったのか、蘭には想像もできないが。
新一は突き出された蘭の手のひらを・・・事も無げに、舐め上げた。
呆然とする蘭の目の前には、変わらず安らかな寝息を立てる、新一。


一瞬で、頭が真っ白になってしまった。
新一の両の目は、しっかりと閉じられたままで。
起き出す気配は、いまだにない。


予想外の出来事に吹き飛んだ意識が徐々に戻り、蘭が己の身に起こった事態を理解し始めた頃。
独特の色彩を持つ新一の瞳が、突然パカっと開き、蘭の視線とぶつかった。

「・・・あれ、蘭?」

こんなとこで何やってんだ、と続けようとした新一の言葉は、蘭の一連の動作によって掻き消された。

「きゃあぁぁあっ!」
ドンッ、ガツン。

高い悲鳴と同時に低く響いた、何かが何かにぶつかる音。

「な、何だ?何があった?」

新一が驚くのも、無理はない。
目覚めたら、いきなり蘭に叫ばれて。
その蘭は、座り込んだまま、まるで石のように動かない。
一方、蘭も、新一に与えられたある種の衝撃から、今の状況に陥っているわけで―――
驚きに大きく仰け反った反動から、尻餅をつく格好となり。
宙に浮いたままだった右手を咄嗟に振り動かしたところ、優作の趣味丸出しのどっしりと重厚なローテーブルに、強かに打ちつけてしまった。

「・・・・・・っ」

蘭の華奢な右手首は、見る間に赤く腫れあがっていく。
痛みで言葉が出ず、息を飲んで、小さくうずくまる蘭。
何がなにやらサッパリわからない新一は、低速回転気味の寝起きの頭で、今置かれている状況を整理しようと試みた。


警視庁での用事が思いのほか早く終わり、帰宅後、ちょっと休憩するだけのつもりが、ついうっかりソファで寝こけてしまったらしい。
そして、目を覚ましたら、何故かあっという間にこんな状況に陥っていて・・・。
理由は良くわからないが、今、最優先しなければならないことは、わかる。

「とにかく、見せてみろ、それ」

負傷した蘭の右手を診ようと、差し出された新一の左手。
それを避けるように、蘭は更に小さく膝を抱える。
拒絶を示す蘭の頑なな態度に、新一は落胆を隠せない。

(何か無自覚に、蘭を傷つけた・・・?)

思い当たる節が多すぎて、どれがバッチリ該当するのか、判断がつきかねる。
察してやれない自分自身にもどかしさを覚えつつ、新一は素直に問うた。

「なぁ、蘭。オレ、おまえに何かした?」

新一はできる限り優しく呼び掛けてみるが、声を発することを忘れてしまったのだろうか。
蘭は口をパクパクさせるだけだ。

「あとでタップリ怒られてやるから、今は大人しくオレの言うこと聞いとけ。ほら、腕、見せて」

もう一度蘭の目の前に左手を突き出して、新一は蘭を促そうとするが、蘭は痛みと困惑が混ざった表情のまま、動かない。
新一には、もう本気で、何がなんだかわからない。

目の前の謎を放置するのは新一の主義に反するが、それよりも今は、蘭のほうが心配だ。

「怪我の度合いを見るだけだって。それさえイヤか?そんなにオレのこと・・」
「・・・・・覚えて、ないの?」

ようやく蘭が発した言葉に、新一は質問を繰り返す。

「だから、何を?」
「だって新一、寝てると思った、のに。あんな・・・」

歯切れ悪く口ごもる蘭。
言われてみれば、目覚める直前に、何か甘い感覚が芽生えていたような気がしないでもない。
記憶を辿った結果、新一の脳内で弾き出された答えは―――

「もしかしてオレ、寝てる間に、蘭にキスでもした?」
「やだ、そんなんじゃないわよ、バカっ!」

蘭は顔まで赤くして反論してきたが、無意識に振り上げようとした右手に激痛が走り、再び顔をしかめている。
新一としては、半分くらいは茶化すつもりで聞いてみたのだが。
蘭の反応からして、どうやらこの推理は外れらしい。
無自覚にそういう手段をとってしまうほど、人として落ちぶれていなかったことに、新一はホッとした。
しかし逆に、どこかガックリする部分も心の片隅に感じられて。
自らの深層心理に苦笑するしかなかった。

そんな新一の様子に、む、と不機嫌そうに眉を寄せる蘭。
すかさず新一は蘭の右手を取った。
彼女の注意を自分自身に向けさせ、その隙を突いたのだ。

「ちょ・・・新一?!」
「よし、骨に異常はなさそうだ。でも、今夜は患部を動かさず、じっとしてること。いいな?」

声調はキツイが、新一は宝物を扱うように慎重に蘭の手を取り、怪我の程度を見極めていく。


先刻の動転から、少しずつ平静を取り戻してきた蘭は・・・
ようやく新一の言葉を、行動を、素直に受け入れらるようになった。

ドキドキもヒヤヒヤもさせられるけど、結局のところ、新一の傍は安心する。
それは、蘭にとっては、揺るぐことのない事実。
新一にとっても、そうであれば良いのだけど。


丁寧に処置されていく右手と、新一の手を交互に目で追いながら。
蘭は「大袈裟よ」と言い張るが、新一は一歩も譲らない。
ご丁寧に三角巾までつけられて、まるで重症患者のようだ。

「ねぇ、ちょっとこれ、やりすぎじゃない?」
「だめ。そうじゃなきゃ、おめー、すぐ無茶するだろ」
「新一にだけは、そう言われたくないわよ」
「お互い様、だろ?」

そう言って笑う新一の横顔に、蘭の目線は奪われてしまう。
脈を打つ毎に、打ちつけた右手の痛みがじんじんと全身に回っていく。

でもこれはきっと、痛みだけじゃない。
蘭の心の中に、新しい嵐の種が芽吹き始めていた。


* * * * *


「で?オレは一体、蘭に何をした?」

救急セットを片付けた新一は、蘭の目線に合わせるように背を少し丸めてソファに並んで座り、先程の会話の続きを促した。
明晰な頭脳の持ち主である名探偵は、蘭の都合良く忘れてはくれなかったらしい。

「本当に、覚えてないのね?」
「だからこうやって聞いてんだろ?」

ピピピピピピ・・・

突然、2人の間に割って入る、デジタル音。
ハッとして、立ち上がる蘭。
慌ててキッチンに向かった蘭の背後を、当然の如く、新一もついてきたわけで。

「お、今日はデザート作りか?でも、その状態じゃ、完成できないな」

そう言って手を貸そうとした新一を制し、蘭は左手だけで、焼きたてのスポンジを器用にオーブンから取り出した。

調理台の上には、用意しておいたクリームとフルーツが、出番を待っている。
けれども新一が言うように、利き腕がこの状態では、蘭が仕上げ作業を自力でおこなうのは難しい。

キッチンに漂う甘い香りも、今の蘭には苦々しく感じられる。
バースディ・ケーキなのだから、今日完成させないと、何の意味もなさない。

深い溜め息とともに、力なく椅子に座り込んだ蘭を、新一は明後日の方向に心配してくる。

「ったく、無茶すんなって言ったのに。腕、痛むんだろ?」

ううん、と首を横に振る蘭の漆黒の瞳には、光るものがジワジワと滲んできて。
新一をギョッとさせた。

「・・・ら、蘭?どうしたんだよ?!」
「新一ぃ・・・ごめんね。わたし・・・っ」
「別にそんな、泣くほどのことじゃねーだろ」
「だって、今日完成させなきゃ・・・ダメ、なんだもん」

最後のほうはもう、涙声で霞んでいた。
新一を困らせたくないから、涙は見せたくないのに。

「そんなに急ぐなら、手伝ってやろうか?
経験はなくても、蘭が隣で指示してくれれば、オレでも何とかなるだろ」

それならいいか?と新一は親切心で蘭に提案してくれたのだが。
当然、蘭にとってはそれで良いわけがない。
首を横に振って、言葉もなく否定の意を伝える。

ただ、新一に笑って欲しかっただけなのに。
どうして真逆のことになってるんだろう?

怪我してしまった自分自身が悔しいのと、新一の優しさが嬉しいのとで、心が熱い。
熱くて熱くて、止まらない。






「えーっと。とりあえず、オレが蘭に何かしたのが事の発端、ていうのは合ってるのか?」

探るように慎重に、新一は困り果てた声で、随分と落ち着きを取り戻してきた蘭に問う。
幼子をあやすように、ポンポンと彼女の背中を摩りながら。

「新一は、悪くないよ」
「でも、原因は言いたくない、てこと?」
「そんなこと、ない。ただ今日が、特別なだけ」
「なんでさっきから、そんなに今日にこだわるんだよ?連休だからか?」

顎に指を当てた、推理中によく見せるお決まりのポーズで、暫し考えに耽る新一。
当てもなく天井辺りをさ迷わせていた目線がふと止まり、唇からは感嘆符が零れた。

「あ、そっか。今日はオレの・・・」
「また忘れてたの?ホント新一ってば、自分自身のことに関しては無頓着なんだから」
「いいじゃねーか。そのかわり、蘭の誕生日は忘れたことねーだろ?」
「そういう問題じゃないのよ」
「じゃあ、何が問題?オレに解けない謎はないぜ?できることがあるなら、いつでも言ってくれよ」

真っ直ぐに気持ちを言葉をぶつけてくる、勝気なはずの名探偵の表情は、どこか儚げに見えて。
自由に動かせる左手は、真っ直ぐに新一へと伸びていた。

そっと触れれば、しっかりと新一の体温が伝わってくる。
わたしの体温も、ちゃんと新一に伝わってる?

雫の乾いた瞳で新一を見据えて、蘭は胸の内を披露した。

「新一にはね、もっともっと、自分自身を大事にしてほしい。
もっともっと、笑顔でいてほしい。それだけよ」
「了解。じゃ、まずは蘭、おまえが笑ってくれないと困る」
「新一、わたしの話、ちゃんと聞いてた?わたしはね・・・」
「オレだって、蘭にはずっと、笑顔でいてほしい。随分たくさん、泣かせちまったから・・・な」
「そんなの、お互い様、でしょ?」

ついさっき、蘭に向けた台詞を応用されて、思わず新一は苦笑した。
つられて、蘭も小さく笑った。

今日一番の、笑顔で。


* * * * *


結局、ケーキ作りの仕上げは、新一が担当することになった。

「オレの誕生日なんだから、好きにさせてもらう」

新一のこのひと言で、蘭の反論はすべてシャットアウトされてしまったのだった。
一番最後の、苺を乗せるところだけは、蘭が担当したけれど。




夕食もケーキも食べて、ひと段落した頃。
リビングで食後のお茶をゆったり飲みながら、そういえば、と新一は切り出した。

「結局オレ、寝てる間に何したんだ?」
「もう忘れてくれて良いわよ、そんなこと」
「無理。だってオレ、探偵だぜ?謎を謎のまま残すのは、性に合わねぇ」

もうこの話題に戻ることはないだろう、と蘭が安心しかけた途端、これだ。
まったく、油断ならない相手である。
そんなところも含めて、新一を好きになったのだけど。

悪戯っ子のように目を丸くして、蘭の言葉を待つ新一。
ふぅ、と小さくついた溜め息は、羽のように軽い。

「じゃあ言うけど・・・」





このあと、飲みかけのお茶を盛大に零した新一は、蘭にお小言を喰らうのである。


− 新一BD編・E N D −


蘭ちゃんBD編へ → 


ここまでは、5/4のスパコミでお配りした無配本の内容でした。
WEB用に改行を入れたり、文章を短く切ったり、若干の単語の入れ替えなどはしています。
睡眠時間5分弱、夜鍋して作った本(出発ギリギリまで出力していた/苦笑)なので、改めてみると粗が目立ちます。でも、折角のスパコミ、しかも新一プチオンリーだったので、何かやりたかったんです。
その心意気だけでも感じていただければv

今日はココでタイムアップ〜(><)
後半は蘭ちゃんBDです。短くなりそうですが、また後日にお付き合いくださいませ!


2008/May/14

[Back to Page Top]

Copyright© Karin * since 2003/July/07 --- All Rights Reserved.