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顔を背けたままの蘭に、新一の声が降り注ぐ。 「ちゃんとオレのほうを見ろよ」 「やっ。離してよっ!」 精一杯肘を突っ張って新一の腕から逃れようとするのに、蘭にはほんの僅かに隙間を広げることが出来る程度。目に見える形で新一との差を提示され、蘭の中には、ますます行き場のない感情が渦をなす。 ―――いつもなら安心出来る新一の腕の中なのに、今の蘭には苦しいだけ。 一方では、研ぎすまされた感覚が、昨晩感じた違和感の正体を追求する。 そっと顔を上げれば疑念は確信に変わり、力強い腕とまっすぐに見つめて来る瞳に、やっぱり、という思いが沸き上がる。 強ばっていた蘭の体から、すぅっと力が抜けていく。 新一は、ようやく顔を上げた蘭の次の言葉を待つべく、ゆっくりと両手に込めていた力を解放した。 ためらいがちに開かれた唇からは、新一にとって、再び予期せぬ言葉が飛び出す。 「・・・わたしなら、簡単に騙せると思った?」 「突然、何言ってんだ?そんなこと思うわけないだろ?」 「じゃあ聞くけど、昨日の夜ここに来たのは、一体誰?あれは新一だったけど、、、でも新一じゃなかった。そうなんでしょ?」 重く短い吐息に沈痛な面持ちを重ね、新一は丁寧に言葉を選ぶ。 「これだけは先に言わせてほしい。蘭に対するオレの気持ちは、決していい加減なものじゃないから」 蘭を真正面に捕らえて、ゆっくりと確認するような口調で話す新一の声は、しっかりと蘭の脳裏にも浸透していく。それでもなお、霧がかかったような、鈍い気持ちが拭いきれない。 「確かに蘭が言うように、昨日ここへ来たのはオレじゃなくて、快斗だ」 「黒羽君が?どうしてそんな、、、」 例の事件が解決し、新一と快斗が友達として付き合うようになった頃、蘭は快斗を紹介された。 新一に良く似た容姿の快斗を見て「いつかの交差点で見かけたのは、あなただったのね」と蘭は一人合点しながら、初めましてと挨拶を交わした。 当初、快斗が怪盗KIDだという事実は蘭には伏せられていたが、新一を交えて何度か顔を会わせるうちに、何となく勘付いてしまった。確証のないまま新一に問い質したとき、小さく笑って「もうヤツの活躍する時代は終わったんだ」と言ったただけで、肯定も否定はしなかった。勿論、蘭にはそれ以上の説明は不要だったけれど。 新一がコナンとして仮の姿をしていたのと同様に、快斗にも何かしら原因があって怪盗KIDとして世間を騒がせていたのだろうということは、容易に想像がついた。快斗がごく稀に見せる複雑な色の瞳は、心の奥深くに、すごく温かいものと何か辛いものを併せ持っているように、蘭には感じられたから。 新一と同じ、光と陰を宿した、瞳。だから、警戒心が芽生えなかった? 黒羽君が、変装の名人である怪盗KIDだから? それならどうして、わざわざ新一の変装で、しかもあんな時間と方法でわたしに会いに来たの? 自らの心を整理しようと、蘭はふるふると頭を振って、もう一度新一を見据えた。 新一は、変わらず蘭をまっすぐに見詰めている。 「まずは、年末から今日までのことを話すよ」 「現場に行ったんじゃないとしたら、、、わたしとの約束よりも、もっと大事な用事が出来た、ってことなんでしょ?」 「だから、そうじゃないって言ってるだろ?」 「じゃ、どこで何をしてたのよ!」 「東京から3時間くらいのところで、いろいろと、な」 「3時間っていうと、、、もしかして、大阪?」 とにかく、蘭がどう思ったか、全部話し終わった後に改めて聞かせてくれればいいから。 そう追加して、新一の空白の数日間が、明らかにされていった。 *** 大晦日の日の朝。1本の国際電話が、新一の携帯に着信した。 発信元は―――母親である、工藤有希子。 「母さん? 何だよ、まだ約束の時間じゃないだろ・・・」 今夜の予定を考えていて、あまり良く眠れなかった新一は、ローテンションで応対する。 逆に、有希子は慌てた様子で、捲し立てるように返してきた。 「新ちゃんゴメンっ。頼まれてた例の物、ちょっと間に合わないみたいなの」 「・・・何だって?!」 有希子の一言で、一気に脳細胞が活性化する。 頭の片隅では、音を立てて崩れ去ったスペシャルプランが、虚しく残像を残す。 話の展開を半分予知しながら、空いたほうの手でPCを立ち上げ、検索を開始する。口先では冷静沈着に、状況をより的確に掌握するべく「それで?」と続きを促す。 「荷物だけ先に目的地に出発させたんだけど、持ち主の私たちがまだLAで足止めされてて」 「ははぁ、さては父さん。上手く逃げ出せなかったんだな?」 「こうなったら私だけでも先に、と思ってギリギリまで調整しようとしたんだけど、、、流石にこの時期は混雑してて、約束の時間までに到着出来るチケットを抑えられなかったのよ。ね、どうしよう?」 「だから、最初から直接こっちに郵送してくれって頼んだだろ? なのに無理矢理ハンドキャリーするって言い出すから」 「だってぇ、久しぶりに新ちゃんと会いたかったんだもの。それに、決定的瞬間直前の息子の背中を押してやるのも、親としての務めじゃない?」 「もういい、わかった。・・・オレが取りに行く」 有希子の驚いた甲高い声をスルーして、会話を強制終了させるのとほぼ同時に、予約完了と荷物の追跡結果をプリントアウトする。 とにかく、カウントダウンまでに残された時間は、あと半日と少し。 こうなったら、途中の諸々の予定は全部キャンセルして、一番最後の、とっておきのヤツだけでも実現させなければ! 必要最低限の身支度を整えて、新一は勢いよく玄関を飛び出した。 ここで蘭と出会ったのだが、事情を説明している猶予すら、このときの新一には残されておらず。仕方なく「カウントダウンまでには戻る」とだけ言い残して、蘭をその場に置き去りにしてしまった。 今なら、このときの自分の行動は浅はかな愚行だった、と思えるのだが。 何故か「絶対に間に合わせてみせる」という根拠のない自信のほうが、強く出てしまっていた。 渋滞しがちな道路事情を考慮し、電車を乗り継いだ新一が向かったのは―――新東京国際空港。 年末年始のバカンスに飛び立つ人混みをかき分け、目的のゲートに到着したのは、離陸5分前のこと。結局、蘭にフォローの電話を入れる隙もないまま、バタバタと着席し、東京から約3時間の移動に突入した。 陸路ではなく、空路で。 新一が降り立ったのは、、、夏の日差しが降り注ぐ、グアム国際空港だった。 工藤家の親子の間で企てられた予定は、つまり、こうだ。 優作と有希子が、新一に頼まれた物を含めた長期滞在用の荷物を先に発送し、遅れて本人達もグアム入りしておく。(これは、優作が編集者からの執筆攻勢から逃れるため、でもある。) そして、大晦日の朝。グアムから、荷物を受け渡しするためだけに成田へ立ち寄り、到着ロビーで顔を合わせる。その後、優作と有希子は再びグアムへ戻り、新一は荷物とともに工藤邸へ引き返す、、、 という、かなり手荒な強硬手段ではあったが、そこは海外旅行慣れしている工藤家の面々。 問題なくクリア出来るはずだった。 だが、最初の一歩、、、LAを出発する時点で狂いが出てしまっては、どうにもならない。 3時間強のフライトのあと―――事態は更に新一の予想を超えた展開を繰り広げていく。 浮き足立つ観光客の波をすり抜けて、はぁ、と溜め息をついた新一は入国審査場へ向かった。 米国居住権を持つ新一は、通常の観光客とは別の手続きがあり、窓口も別になる。 刻一刻と過ぎ去る時間に焦る気持ちを抑え、まだ歳若そうな審査官に対して、「観光旅行で」と差し障りのない入国予定を、営業用スマイルと完璧な発音で答えた。 審査を待つ間、念入りに今後のタイムスケジュールを頭の中で復習する。 日本の時刻は、この時点で午後4時。 父さんが抑えたホテルは、空港からは30分の距離。成田に戻るフライトは、約3時間後。 天気は良好だから、フライトに問題はない。 あとは電車を乗り継いで、、、よし、カウントダウンにはなんとか間に合うな。 新一が内心でひっそり胸を撫で下ろしたとき、審査官は、提出されたパスポートと航空券をチェックしながら、こっそりと手元のボタンで別の係官に合図を送っていた。 年齢の割に多い出入国スタンプの数、滞在予定地、帰国用の航空券の日時。 それに、何よりも「おかしい」と思ったのは、その出で立ち。 いくら市民権を持っているとはいえ、ぷらっと近所に買い物に来た、という程度の身軽さは、とても「観光に来た日本人」とは結び付かないからだ。 やけに時間がかかってるな、と危ぶみ始めた頃、、、重厚な感じの男性職員2人が新一の目の前に現れた。堅苦しそうな表情で「ちょっとこちらへ」などと言われ、そのまま別室へ案内されてしまった。 彼らに導かれるままに連れて来られたのは、入国審査場の片隅にある、壁も天井も白で統一された小部屋。中央に机と椅子が2脚あり、それ以外は何もない。どことなく見慣れた光景。 そう、ここは―――不審な入国者を取り締まるための、いわば取調室。 通常ならば、何もやましいことはない者でも、別室に連れて来られた時点でナーバスになり、多少はおどおどしたりするものだ。しかし、取調室の雰囲気は、新一にとっては普段の生活の中にあるものなので、別段珍しいものではない。落ち着き払って、進められた奥の椅子に腰を下ろした。新一の背後と出入り口とで、先程の二人が個別に配置につき、手前の椅子には、ファイルを片手に入室してきた別のスーツ姿の男性職員が座り、のらりくらりと質問を投げ掛けてくる。 ここ数ヶ月の間の渡米回数が異様に多いとか、観光で来たわりに数時間しか滞在しないのはおかしいとか、そもそも所持品が財布と携帯とパスポートのみ、というのも通常ではあり得ない、というのが彼らの言い分。 おまけに、滞在予定地に記されたのは、星が5つ並ぶほどの高級ホテル。それを新一のようなティーンエイジャーが一人で利用するというのも、考えられない。また、落ち着き過ぎの態度自体も納得し難く、、、etc。 挙げ句の果てには、何か怪しい犯罪組織に関わっているのではないか、とまで言われる始末。 最初は大人しく、その職員の御託に付き合っていた新一も、確実に進んでいく時の流れに焦りを隠しきれなくなり、つい、いい加減にしろよ、と怒りのボルテージを上げてしまった。 手っ取り早く現状を打破するための最終手段として、黒の組織を撃破する際に手を結んだFBI捜査官の実名をいくつか出し、「彼らがオレの身元を保証してくれる」と言えば、ますます怪しい奴だ、と話は余計に良からぬ方向へと進み、、、。 全ての確認が取れた頃には、既に折り返しの便は離陸し、日本では日付も変わってしまっていた。 これらの確認事項の合間を縫って、こっそりと蘭に連絡を取ろうとしたのが、あの細切れの留守電とメール。 蘭からの返事がこないまま、携帯は途中で使えなくなってしまった。自由の身になってからも、公衆電話やホテルの電話から何度も連絡を入れるのに、無情なサービス音が流れるばかり。肝心の蘭の声が聞けず、何処で何をしているのかも分からない。「携帯がダメなら自宅に電話を」と思ったが、蘭が仕掛けた両親への計画を事前に聞いていたので、それもやむなく却下。 結局、蘭の所在も知れぬうちに、無駄に豪華なホテルに一人で過ごすこととなってしまった。 更に追い討ちをかけるように、悪いことは重なるもので。 苦労して手に入れた次の成田行きの便は、エンジントラブルでフライト中止。1年のうちで一番込み合うこの時期に、空席は乏しく、なかなか思うように代替チケットが入手出来ない。過ぎ行く時間を忌々しく思いつつ、でも、どうすることもできやしない。 こうしてグアムで足止めを食らっている間、新一の身元を証明してくれたFBI捜査官から未解決の事件について意見を求められ、無断で名前を借用させてもらった手前、無下に断ることも出来ず、更に1日経過。 そうこうする間に日本では3が日が明け、再開される補習を1日たりとも休むわけにはいかない新一は、やむなく快斗に代役を依頼。ついでに、園子によって妨害されてずっと様子が知れなかった、蘭の具合を確認してもらった。 いくつもの不運な偶然が重なり、新一がようやく帰国出来たのは、始業式当日の今朝。 朝7時過ぎに成田着、のフライトだった。 *** 「これが、オレの1週間の全容」 少し肩を落とし気味に、新一がゆっくりと言った。 一連の話に、蘭は驚きを通り越して、ただ唖然とするより他になかった。 東京から3時間とは言っても、国内での移動でさえ、ちょっとそこまで、という距離ではない。そんなことは、蘭が指摘するまでもなく、誰の目にも明らかなこと。 突飛な行動をとってまで、新一が工藤夫妻から受け取ろうとしていたものって・・・? 謎が謎を呼び、蘭の頭の中でグルグルと円を描き続けていた。 新一は、押し黙った蘭との沈黙を恐れるかのように、言葉を繋ぐ。 「ずっと蘭を待たせてばかりのオレが言えることじゃねぇけど、、、一人でいる間に、いろんなこと考えたよ。オレに対する何らかの矛先が蘭のほうへ向けられて、何か危険な目に遭ってるんじゃねぇか、とかさ」 自分の名前を出されたところで、蘭は一瞬、ピクッと反応して身を強ばらせた。 だが、その唇は固く閉じられたままで、新一の声だけが高い天井に吸い込まれていく。 「それから、、、鉄砲玉みたいに突然飛び出して行っちまうオレのことなんて、蘭にとってはもうどうでも良くなってるんじゃねぇか、とか。今まで蘭にどれだけの不安を与えていたのか、わかってるつもりだったのに、自ら体験するまで本当のところを知ることがなかった。ほんと、どうしようもないよな」 やや伏し目がちに話す瞳には、一層深い蒼の色を宿していて。 蘭の中に、消化しきれない思いが巡る。 軽く添える程度に重ねられていた、新一の両手をやんわりと押し戻して、蘭は気持ちのままの言葉を新一に返した。 「・・・勝手すぎるよ、新一」 否定はせず、その通りだ、と新一は静かに蘭から発せられる次の言葉を待つ。 「いろんな不可抗力で、新一がどうにもならない状態に置かれていたことは分かった。でも、だからって『大変だったわね』の一言で片付けられるようなことじゃないでしょう?」 「心配させて、悪かった。ほんと、我ながらバカが過ぎたよ」 「分かってないよ。新一、全然分かってない」 「蘭・・・?」 新一には、ついに滲み始めた蘭の瞳を、黙って見詰めるしか術がなかった。 「わたし、新一と一緒に卒業式を迎えて、これからも一緒のときを過ごせたら、って思ってた。だから、卒業が危ない新一のために、クラスのみんなや先生達の協力のお陰で特別処置を出してもらえたとき、すごく嬉しかった」 「オレだって、みんなに感謝してる。だから、やむをえず緊急手段をとったんだ」 「でもそれは、お休み返上で補習を開いてくださった先生達や、今までバックアップしてくれたクラスメートを騙して、その手段として黒羽君を利用したことになるのよ? 違う?」 「結果としては確かにそうだけど、じゃなきゃ、おめぇの望みを壊しちまうと思ったから、オレ、、、」 「そんなの、他人を裏切ってまで叶えたいものじゃないわ!」 蘭の一番内側にある気持ちと一緒に、抱えていた枕にも雫がこぼれ落ち、吸い込まれていく。 自ら招いた過失によって蘭の頬を悲しく濡れさせてしまっていることが、新一には非常に忌々しく思われた。だが、その雫をすくってやることも出来ず、静かに蘭の言葉を受け止めることしかできない。 「わたしの、ううん、みんなの気持ちを滅茶苦茶にしてまで、新一は何がしたかったの?」 思わず伸ばしかけた手をぐっと握りしめ、新一は暫し言葉を失った。 「もう、わたしには見えなくなっちゃったのかな。新一の気持ちが」 「・・・・・」 「こんないい加減な気持ちで向き合われても、ちっとも嬉しくなんかないわよ」 負の色を浮かべた瞳で放たれた、最愛の人の悲痛な言葉。 重く、深く、新一の内部をえぐり、目眩のようなを感覚を与える。 わずかに頭を振って蘭を見つめると、新一は意を決したように言葉を返した。 「・・・オレはいつだって真剣だよ。蘭、おめぇのことに関してはな」 そう言いながら、制服の内ポケットから小さな包みを取り出した。 新しい年が明けたら、真っ先に渡そうと決めていた。 多少の無理をしてでも、少しでも早く伝えたい言葉があったから。 だが、結局は間に合わなくて、蘭の気持ちを掻き乱してしまったのだが。 「あんな無茶な行動をとったのは、コイツを取りに行ってたから」 包みを丁寧に開き、蘭の掌にそっと乗せてやる。 記憶のどこかに記されていた、懐かしい輝きが蘭の中に蘇った。 「これって確か、、、有希子おばさまの?」 「ああ。覚えてたか」 幼い頃、新一と一緒に見せてもらった、有希子の宝石箱。 絵本の中のお姫様が身に着けていたような、きらびやかな宝石が並んでいた。 蘭が「どれが一番のお気に入り?」と問うと、有希子が取り出したのは、いくつも石が付いた豪華なものではなく、最もシンプルなデザインの指輪。 不思議そうにしている蘭に、有希子は「この指輪から、私の幸せが始まったのよ」と優作から貰った初めてのプレゼントなのだ、と説明した。そして、蘭にだけこっそりと耳打ちする。 「蘭ちゃんが大きくなったら、この幸せをリレーしてあげるわ」と笑顔を付け加えて。 女同士の約束ね、と有希子にウィンクされ、うん!と蘭も笑顔で返す。 一歩離れたところでは、仲間外れにされた新一が何故か照れくさそうにしていた。 この頃は、「いつかわたしも、幸せなお姫様になれるんだ」と、純粋に心を嬉しさで満たすことができていたのに。 わたしの心は、いつから素直に感じることが出来なくなってしまったのだろう・・・? あの日の眩しい気持ちを思い出し、コロン、と掌の上で指輪を転がしてみると、蘭の記憶の中にあったデザインとは、どこか少し違っているように思えた。 手に取って良く見れば、真円の中央に新たに埋め込まれた貴石が、鮮やかなグリーンの輝きを放っている。 それがどういう意味を持っているのか、蘭にもすぐにわかった。 息をのんで、目の前の人を見上げる。 蘭に注がれる眼差しは、今まで一緒に過ごしてきたなかで、一番優しい光を宿していた。 ひと言ずつ丁寧に、新一は大切に灯し続けていた気持ちを打ち明けた。 「ずっと蘭の側にいさせてほしい。オレと、、、結婚してください」 二人を見守るように、指輪だけが、蘭の掌でそっと瞬いた。 5月の誕生石、エメラルド。 宝石が示す言葉は―――『幸福』。 |
いつのまにやら、第8話まで続いてしまいました。なんか、複雑骨折した感じ? 切りの良い数字で終われたらいいなぁ、なんて思ってみたり。(←確約はしませんけどね) えーっと、コメントというか、言い訳を少々。 一応、細かく数えると海外には10回以上行ったことがあるのですが、私は空港で別室に連れて行かれたことはありません。(荷物が少な過ぎて呼び止められた程度の話なら、他人の話ですが実話です。) なので、取調室の描写はでたらめだし、実際にそういう場面に遭遇したとき、電話をかけることが出来るかどうかも不明です。←家族とかには出来るのかなぁ?でも多分、出来ないような気はする。調べ切れませんでした(><) グアムの空港についても、実際に行ったことはないので、違ってることが多々あると思います。 それに、お昼過ぎに東京ーグアム間を結ぶ飛行機は、、、実際には多分ない、です。 ま、フィクションなので、、、ね?(滝汗) Copyright© Karin * since 2003/July/07 --- All Rights Reserved. |